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ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえ宣言#1 ――国家の都合ではなく人権を優先する移民政策・入管制度を

  ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえ宣言#1 国家の都合ではなく人権を優先する移民政策・入管制度を 2021年9月8日――ダーバン宣言20年目の日に   「(外国人は)煮て食おうが焼いて食おうが自由」(法務省入国参事官の言葉:池上努『法的地位 200の質問』楽人館、1965年)。 「姉への言動は、いじめ。何人亡くなれば入管は変わるのか」(ワユミ・サンダマリ、 2021年8月10日記者会見にて)   1 入管行政が浮かび上がらせる日本の闇  移住者が置かれてきた状況は、日本という闇を鮮明にします。  名古屋入管収容中のスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんは、著しい体調の悪化を訴えていたにもかかわらず、治療らしい治療も受けられないまま、本年3月6日に亡くなりました。日本という社会、その出入国在留管理庁(以下、入管庁)の監督下で起きたいたましい死亡事件です。  ウィシュマさん死亡事件は偶然起きた一事例ではなく、日本の入管体制が持つ問題点を凝縮したものとして理解されるべきです。  8月10日に発表された入管庁による調査報告書は、死因も責任も明らかにせず、責任を取るべき職員への処分も遺族への報告もなく、臭いものに蓋をするための報告書にとどまりました。そもそも、調査対象であるはずの入管庁がこの事件を深刻に受け止めているとは考えられない報告書です。  2021年2月、政府は入管体制の見直しのために、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)等の一部を「改正」する法律案を国会に上程しました。現行法では送還忌避者への対応が困難であり、収容の長期化を招くという理由でした。  法案は、人権侵害のおそれがさらに強いこと、具体的には収容施設での死亡事件の真相究明が不十分であることなど多くの点が指摘された結果、廃案となりました。その過程で、ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件に注目が集まったのです。  改正案は、移住者が置かれた人権侵害状況を反省することも、国連諸機関からの改善勧告を顧みることもなく、全件収容主義、無期限収容体制、司法審査なき収容という現状をいっそう厳格にする内容でした。 日本には外国人の人権を保障する法制度がなく、国境管理・国家安全保障の観点に立つ入管法しかありません。外国人に対しても、その基本的人権を保障する義務が国家にはあるはずですが、入管行政にはそのような

ダーバンからの道・ダーバンから見る日本――ダーバン会議とその後の20年を振り返る

1 ダーバンからの道  20年前の2001年9月8日、ダーバン(南アフリカ)で一つの宣言が採択されました。 世界の被差別当事者と人権活動家が1万 とも 2万とも言われる数 で 集まり、熱意と希望を込め、世界の約200か国が同意してまとめあげた反差別宣言の正式名称は「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界宣言・行動計画」(ダーバン宣言・行動計画)です。 ダーバン宣言は、植民地時代の奴隷制は人道に対する罪であったので、謝罪と補償の道徳的義務があると認めました。人種差別の主要な被害者はアフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、及び先住民族です。移住者、難民、難民申請者など国民でない者に対する外国人排斥問題も掲げられました。さらに若者、女性、被害を受けやすい集団が確認され、貧困、低開発、周縁化、社会からの排除、経済不均衡が俎上に載せられ、武力紛争と人種主義の関係が指摘されました。 宣言採択後の同会議閉会式で、ズマ南アフリカ副大統領は「ダーバン宣言は到達点ではない。ここからの道をいかに歩むかが問われている。私たちは人種差別との闘いという最大の課題にこれから挑戦するのだ」と、闘いの始まりを宣言しました。 それではダーバンからの道を、世界はどう歩んできたでしょうか。日本はどうだったでしょうか。 残念ながら、ダーバンからの道は平坦ではありませんでした。ダーバン会議を途中ボイコットしたアメリカとイスラエルはダーバンの成果を非難し続けました。ダーバン宣言採択から 3日後の 9.11 (同時多発テロ)は世界を暗転させ 、 「テロとの戦い」と称する「人種差別戦争」が仕掛けられ、アフガニスタン、イラク、シリアをはじめ戦場が拡大し、宗教対立、資源紛争、地域紛争が激化し まし た。 パレスチナへの土地収奪、差別、そして空爆が続きます。 旧植民地宗主国も「ダーバン・フォローアップ作業」に十分取り組んだわけでは ありません。 西アジア・中東・アフリカ北部からの難民問題が事態をさらに複雑にし まし た。ブラック・ライブズ・マター(BLM) 運動が拡大し 、イ スラムフォビア(イスラム嫌悪)、アジア系差別 、反ユダヤ主義など への抵抗が続いています。 国連人権機関や世界の人権NGOの努力にもかかわらず、世界 に は人種主義と人種差別 が蔓延しています 。あらゆる国境