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 「ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえキャンペーン」とは

2001年、レイシズム(人種主義)と植民地主義を世界的課題として話し合う画期的な会議がありました。南アフリカのダーバンで開かれた「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連するあらゆる不寛容に反対する世界会議」(略称:ダーバン会議)です。ダーバン会議は人種差別がジェンダーなどの他の要因と絡み合う「複合差別」の視点や、目の前にある差別は奴隷制や植民地支配など過去の歴史と切り離せないことを示すなど貴重な成果を残しました。

そのダーバン会議から20年の2021年、その意義を再確認しながら、反レイシズムがあたりまえになる社会を日本につくるために「ダーバン+20:反レイシズムはあたりまえキャンペーン」を立ち上げました。


<共同代表>上村英明(恵泉女学園大学)、藤岡美恵子(法政大学)、前田朗(東京造形大学)

<実行委員会> 一盛真(大東文化大学) 稲葉奈々子(上智大学) 上村英明(恵泉女学園大学) 榎井縁(大阪大学) 清末愛砂(室蘭工業大学) 熊本理抄(近畿大学) 乗松聡子(『アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス』エディター) 藤岡美恵子(法政大学) 藤本伸樹(ヒューライツ大阪) 前田朗(東京造形大学) 矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動事務局) 渡辺美奈(アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam))    

2021年7月26日現在


呼びかけ文

ダーバンから20年:日本のレイシズム・コロニアリズム・セクシズムを解体する

キャンペーン」参加の呼びかけ

2021年3月15日

 

ダーバン反差別世界会議とは何だったのか?

植民地主義をいかに乗り越えるか?

ブラック・ライヴズ・マターBLMは何を求めているか?

新型コロナはマイノリティを直撃していないか?

ダーバン宣言20周年を私たちはどう迎えるか?

レイシズムを克服するために何が必要か?

あなたもダーバン+20キャンペーンに参加しませんか?

 

2021年は、2001年のダーバン会議(人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議)から20年目となります。

国連の歴史上初めて植民地時代の奴隷制は人道に対する罪であったと認め、被害者に謝罪し、財政支援をすることを掲げた「ダーバン宣言及び行動計画」は、世界中の人種主義や人種差別に光を当て、その歴史的本質と現象形態を分析し、それが現代世界に及ぼしている暗雲を振り払うために国際社会の協調が必要であることを強く打ち出しました。

アメリカでも欧州諸国でも、かつての奴隷制と奴隷取引への反省が始まり、大統領や首相による謝罪発言も続きました。植民地主義と人種主義が差別や抑圧を生み出していることが共通の理解となってきました。

そしてこの20年、国連人権機関では「ダーバン・フォローアップ」が重要課題とされてきました。

2007年には国連先住民族権利宣言、2015年には「持続可能な開発目標SDGs」、2016年には国連平和への権利宣言、2017年には核兵器禁止条約が採択されるなど、環境、平和、人権のための国際社会の取り組みは飛躍的に進んでいます。

ところが、現実には世界各地で宗教対立、民族対立、資源紛争などさまざまな混迷が続いています。中東やアフリカからの難民に対する排除と差別、ロヒンギャ難民の発生、ヘイト・クライム/スピーチ多発、「アメリカ・ファースト」による差別の激化が続いています。

これに対して、アメリカのBLM運動に代表されるように、人権と解放のための闘いも力強く立ち上がっています。世界各地のマイノリティや先住民族の人権運動も粘り強く続いています。ダーバン宣言と行動計画の実施を求める声は、被差別当事者だけでなく、各国政府や人権NGOのコミットを引き出してきました。

日本では、2001年のダーバン会議に参加した市民グループ「ダーバン2001日本」の取り組みがあり、多くの人権NGOや個人が関心を寄せてきました。

ダーバン10周年には、シンポジウムと宣言運動の取り組みもなされました。2010年は1910年の韓国併合100周年であったことから、日韓市民共同宣言、及び東アジア歴史・人権・平和宣言という2つの宣言を作成しました。他方、2011年、同志社大学で、ダーバン会議の事務局長だったピエール・サネ氏を招請して10周年シンポジウムが開催されました。

しかし、この20年間を見ると、反差別と人権擁護の闘いは一貫して大きな壁に直面してきたと言わなければなりません。21世紀に入ってヘイト・クライムとヘイト・スピーチが悪質さを増し、難民(及び認定申請者)や移住者が置かれた状況も改善しているとは言えません。

アイヌ民族について日本政府は先住民族と認めながら、先住民族としての権利を認めたとは言えません。遺骨返還問題も裁判所で闘われています。

琉球民族について日本政府は先住民族と認めず、辺野古基地建設強行に見られるように、ますます差別と弾圧を強化しているのが現実です。遺骨返還問題も裁判中です。

在日朝鮮人に対する差別と迫害は改善に向かうどころか、悪化の一途を辿っています。在留資格問題や指紋押捺拒否問題の時代を経て、今日では朝鮮学校に対する激しい差別、民族団体を標的としたヘイト・クライム、そしてヘイト・スピーチが深刻になっています。

被差別部落については、部落差別解消法が制定され、各地で自治体条例を求める運動が続いていますが、他方でネット上の新たな「部落地名総鑑」事件が起きるなど、差別事件が後を絶ちません。

さまざまなマイノリティに対する差別が競合し、重層的になる「複合差別」現象も喫緊の課題です。ヘイト・スピーチ裁判の中で日本の裁判所が「複合差別」を認定する事例も出てきました。

日本におけるさまざまな差別は、総体として見ると、戦争と植民地支配の歴史や、階級階層あるいは地域や職業など社会的要因に根ざした「構造的差別」として被害を拡大していることがわかります。

日本軍性奴隷制(慰安婦)問題や徴用工問題をはじめとする「戦後補償」問題においては、戦争と植民地支配の歴史を忘失し、植民地支配犯罪に開き直る姿勢が顕著であり、東アジアの連帯と平和を妨げています。

日本における人種民族差別について、この20年間に人種差別撤廃条約に基づく人種差別撤廃委員会で4回の審議が実施されました。2001年、2010年、2014年及び2018年に、日本政府が提出した報告書について、人種差別撤廃委員会での審査を経て、改善勧告が出されています。

国連人権理事会における「普遍的定期審査(UPR)」でも日本の人権状況が審査され、各国から数多くの改善勧告が出ています。拷問問題、死刑問題、子どもの権利など多くの勧告とともに、人種民族差別の是正を求める勧告が続いています。

日本社会に生きる私たちはダーバン会議から20年を経た日本で、反差別と人権擁護の闘いをさらに推進し、差別のない、共に生きる社会を構築するための取り組みを、いっそう幅広く、いっそう深く進めていかなくてはなりません。

過去の戦争と植民地支配における加害の側に立つ日本の市民には、とりわけ歴史的差別と現在の人権状況に対する大きな責任があります。

過去の戦争と植民地支配における被害の側に立つさまざまな市民、そして現在の日本社会に由来する差別被害を被っているマイノリティや先住民族である市民には、差別のない共に生きる社会を求める権利があります。

そこで私たちはダーバン会議から20年の2021年度に「ダーバン+20」キャンペーンを立ち上げ、ダーバン宣言と行動計画を基礎に、次の10年に向けた反差別と人権の宣言と行動計画をめざす運動を呼びかけます。

 

*ダーバン宣言及び行動計画はヒューライツ大阪のウエブサイト参照

https://www.hurights.or.jp/wcar/J/govdecpoa.htm

 

<呼びかけ人> 上村英明(恵泉女学園大学) 熊本理抄(近畿大学) 藤岡美恵子(法政大学)  前田 朗(東京造形大学) 矢野秀喜(強制動員問題解決と過去清算のための共同行動事務局)


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